生活習慣病とは
重篤な疾患の危険因子となる生活習慣病
生活習慣病とは、食生活の偏り、運動不足、睡眠不足、喫煙、ストレスなどの積み重ねが原因となって発症する疾患群を指します。
具体的には、
- 高血圧症
- 2型糖尿病
- 脂質異常症/高脂血症
- 高尿酸血症(痛風)
などの病気が含まれます。
これらにより動脈硬化が進行すると、脳卒中、狭心症、心筋梗塞といった血管病発症のリスクが高まります。
動脈硬化とは、全身の血管の壁にコレステロールなどが付着して、血管が硬く・狭くなった状態のことです。
以下では、生活習慣病のうち、脂質異常症/高脂血症、高尿酸血症を取り上げます。
高血圧症、2型糖尿病については、別にまとめましたので、それぞれのページをご覧ください。
脂質異常症
血中脂質のバランスが悪くなる病気
血中の脂質である、
- LDLコレステロール(悪玉コレステロール)
- HDLコレステロール(善玉コレステロール)
- トリグリセライド(中性脂肪)
が基準値から外れた状態を「脂質異常症」といいます。以前は、「高脂血症」とも呼ばれていました。
脂質異常症診断基準(空腹時採血)
LDLコレステロール (悪玉) |
140 mg/dL 以上 |
---|---|
HDLコレステロール (善玉) |
40 mg/dL 未満 |
トリグリセライド (中性脂肪) |
150 mg/dL 以上 |
Non-HDLコレステロール (総悪玉) |
170 mg/dL 以上 |
Non-HDLコレステロールとは、LDLコレステロール以外の悪玉コレステロールをすべてひっくるめた概念で、いわば「総悪玉」コレステロールです。総コレステロール値から、HDLコレステロール値を引き算することで値を出します。
健診で最もよく見つかる異常
脂質異常症は、健診で最もよく見つかる異常とされています。定期健診における血中脂質の有所見率は約30%であり、3人に1人が何らかの脂質異常を指摘されていることになります。 ありふれており、通常は自覚症状もないせいか、脂質高値を指摘されても深刻に捉えない方が多い傾向にあります。 しかし、慢性的に脂質が高い状態が続くと、動脈硬化を介して重大な病気につながってしまうため、放置しないことが大切です。
脂質異常症を指摘されたら
脂質異常症は、生活習慣の乱れを背景としているため、食事内容や運動習慣を見直すことが治療のスタートラインになります。 具体的には、次のような見直しを行います。
- 肉の脂身、動物脂、鶏卵、果糖を含む加工食品を大量に摂取しない
- 魚、野菜、海藻、大豆製品などの摂取割合を増やす
- アルコールの過剰摂取を控える
- 適正体重を維持する
- 運動習慣を持つ(毎日30分以上が目標)
- 禁煙
多くの場合、既に習慣化されていることをすべて同時に改めるのは難しいため、まずは実践できそうなものから試してみることをお勧めします。
生活習慣見直しによる検査値改善が困難であったり、血管疾患発症のリスクが高かったりする場合には、薬物療法を「追加」することになります。
ポイントは、薬を飲み始めてからも生活習慣改善への取り組みを継続することです。「自由に食事・飲酒したいから強い薬を出して欲しい」とご相談いただくこともありますが、そうしたケースでは良い結果が得られにくい印象です。
高尿酸血症(痛風)
老廃物である尿酸が溜まった状態
高尿酸血症とは
尿酸は、細胞の新陳代謝やエネルギーの消費によって生成される老廃物です。血中の尿酸値が高くなり、7.0 ㎎/dLを超えた状態を「高尿酸血症」と呼びます。
高尿酸血症には、遺伝的な要因だけでなく、食事・飲酒・運動などの生活習慣が大きく影響すると考えられています。頻度は全男性の20%、全女性の5%と、男性により多くみられます。
風が吹いただけで痛い「痛風」
高尿酸血症だけでは症状は出ませんが、尿酸値が高い状態が持続すると、関節に尿酸塩の結晶ができてしまい、急性関節炎である「痛風」を生じます。ある日突然、足の親指の付け根に激しい痛みを自覚するので、「痛風発作」とも呼ばれます。痛風発作が受診のきっかけになるケースも少なくありません。
痛風発作だけでは終わらない
高尿酸血症は、脳・心血管病や腎臓病発症の危険因子であることが分かっています。
痛風発作さえ乗り切れば大丈夫と考えるのではなく、普段から生活習慣改善に取り組むことが重要です。
他の生活習慣病を高率に合併
高尿酸血症は、脂質異常症、高血圧、糖尿病(耐糖能異常)、肥満といった他の生活習慣病を合併しやすく、合併率は約8割に上るとされています。そのため、単に尿酸値のみを追いかけるのではなく、他の生活習慣病の合併を常に意識して診療する必要があります。